UA-139114584-1
top of page

不登校カウンセリングブログその1051.不登校の子供にかける言葉が「毒」にも「薬」にもなる理由。

更新日:2022年10月23日


 



 わが子が不登校になり、その親御さんはおそらく、たくさんの不登校関連の書籍や動画などをご覧になっているでしょう。その結果、「子供を見守るべきだ」とある一方で、「子供に積極的に働きかけるべきだ」という考え方もあり、あるいは登校刺激をするべきだという主張もあれば、登校刺激をしてはいけないという主張もあり、いったいどちらが正しいのか、分からなくなってきた、頭が混乱してきたと、感じておられる親御さんもおられるでしょう。


 実のところ、それら矛盾する考え方や子供にかける言葉は、すべて正しいのです。間違っているわけではありません。正しいのです。


 では、どうしてそのように相矛盾する考え方や言葉があるのでしょうか。それは、不登校の状況にある子供の心は、変化していくからです。それゆえに、ある時に正しかった考え方や言葉が、また別の時にはまずい考え方や言葉になってしまい、相矛盾したものが存在しているのです。別の表現をしますと、ある言葉や考え方が、毒にも薬にもなるということです。


 不登校の状況は一般に、「混乱期」→「安定期」→「転換期」→「回復期」という段階で変化していきます。混乱期は、不登校直後の段階であって、親子ともに混乱している段階です。安定期は、混乱はおさまっているものの、子供の心は「自分はダメだ」「将来には希望はない」という具合に、マイナスの思いでいっぱいになっていて、とても前に進める状態ではありません。転換期は、そういうマイナスの思いが軽くなってきて、外の世界に興味を持ち始めてきた段階です。回復期は、復学した段階となります。


 これらの状況の変化は、子供の心の変化によるものです。子供の心が変化することで、不登校の状況が変化していきます。混乱期から安定期への変化は、親が不登校の状況を受け入れることによって、子供が「安心して」不登校になれるために起こる変化です。混乱期は、親がわが子の不登校を受け入れることができず、「学校に行きなさい!」と強く促します。しかし、子供はもうそれ以上、学校に行き続けることはできなくなっています。そのため、親と子の間で衝突が起こるのです。それが「混乱期」です。その混乱期が安定期に移行するのは、親がわが子の不登校を受け入れることによって、子供は「家に居てもいいんだ」と安心できます。子供の心が混乱から安定になるに伴って、不登校の状況も「混乱期」から「安定期」へと変化するのです。


 安定期から転換期の変化は、子供の心が、「自分の将来はダメだ」というマイナスの思いから、「まだ自信はないけれど、外に出てみようかな」というプラスの思いへと変化していくことで起きています。安定期においては、表向き安定はしていますが、心の中はマイナスの思いでいっぱいです。その心が徐々に変わっていき、そういうマイナスの思いが薄れて、家に居るのは暇だな、外に出てみようかな、という思いに変わってきたのが、安定期から転換期への変化です。


 このように子供の心の状態が変化すると、ある時には毒だった言葉や考え方が薬になることがあります。その逆もまた然りです。そのような言葉を挙げてみたいと思います。





1 見守る

 「不登校の子が元気になるまで、見守ってあげてください」というアドバイスを受けた方は多いでしょう。これなども、子供の心の変化に合わせて行わないと、大いに毒になりかねません。

 「見守る」ことが必要な状態は、子供がエネルギー切れを起こしていて、外の世界にとても出られなさそうな状態、子供が深く傷ついていて、自己否定感を非常に強く持っているような状態です。このような時は、おそらく誰かとコミュニケーションをとりたいとは望んでいないでしょう。こんな時は、言葉をかけることはせずに「見守る」しかありません。

 しかし、それ以外の、コミュニケーションが可能な状態で、「見守る」ことをやると、時間がたつばかりで、不登校の状況に何も進展がなくなってしまいます。その状態では、「見守る」ことは毒になります。


2 「今のあなたでいい」

 この言葉は、「自分はダメだ」という自己否定感を非常に強く持っている状態では、その自己否定感を軽くするための「薬」になります。

 しかし、その自己否定感が軽くなり、子供に生きる活力が出てきた状態で、この言葉をかけ続けると、努力の放棄の勧めとなってしまいかねません。


3 登校刺激

 登校刺激は、不登校になる前の、いわゆる「五月雨不登校」の状況、あるいは不登校直後で、かつ「学校に行こうかな、どうしようかな」と子供が迷っている状態、あるいはかなり元気が出てきて、子供自身もそろそろ外の世界に出ようか迷っているような状態では、背中を後押しする行為になります。


 しかし、それ以外の状態では、不登校の状況を改善する有効な言葉とはなりません。マイナスの心を強く持っているような状態で、登校刺激をされても、子供にとっては毒にしかなりません。


4 勉強を勧める

 一日がたくさんあって、どうせなら勉強してはどうかと、親としては言いたくなるところです。これも、不登校直後や安定期では毒になる危険性が高いです。転換期あたりが、勉強を勧めるのにいい段階でしょう。


5 大丈夫

 大丈夫という言葉は、子供の様子を見てかけてあげる必要があります。子供にもよるところがあって、案外難しい言葉なのですが、自分の欠点ばかり見てしまう傾向の子で、そのような子が強い自己否定感を持っているような場合、「大丈夫」という言葉をかけると、「わかったふりして!」などと反発を招く可能性もあります。

 それ以外では、大丈夫という言葉は、子供に安心感を与える言葉となります。



 不登校の子供にかける言葉や、接し方についての考え方は、子供の心の状態によって毒にも薬にもなります。よって、子供の心の状態をよく見てあげることが、不登校への対応で大切なことです。









 


 


 

Comments


bottom of page