不登校カウンセリングブログその1143.不登校の子供に言葉を伝えたいときは、その言葉の内容と、子供の心の状態との「落差」にご注意ください。
- 不登校・引きこもりカウンセリング「エンゼルアカデミー」
- 2022年5月25日
- 読了時間: 4分
更新日:2022年10月22日

元気がない人に、「元気出しなさい」といって、果たしてその人が本当に元気になるでしょうか。これは難しいところです。元気になる人もいれば、そうならない人もいます。その違いは何でしょうか。
元気がない人には、元気を出さなければならないことは分かっています。おそらく大部分の人が、元気になるべきだということを感じています。それは分かっているのですが、「元気出しなさい」と言われても、元気になれないことがあるのです。
それは、「元気出しなさい」という言葉と、聞く側の心の状態との落差でしょう。落差とは、心の状態の元気のなさの度合いと、その言葉との違いです。ものすごく落ち込んでいて、元気が本当にない時は、元気のなさの度合いが大きいので、「元気出しなさい」という言葉との落差が激しいということになります。ちょっと元気がないぐらいなら、その度合いは小さいので、「元気出しなさい」という言葉との落差は小さいということになります。
伝える言葉と、その相手の心の状態との落差が激しいほど、その言葉は相手に伝わりにくくなります。自分としては、相手が元気になることを心から願い、伝えた言葉であるけれども、それが本当に伝わるかどうかは分からないのです。
不登校の状況にある子供に、不登校の状況から脱出してほしいと願って、コミュニケーションの中で言葉をかけても、その言葉がなかなか伝わらないのは、多くの場合、子供の心の状態が深く落ち込んでいて、悩んでいて、伝えたい言葉との落差が大きいからです。その落差を理解していないと、伝えるどころか、反発を招くことがあります。
最も分かりやすい例で言えば、「学校に行きなさい。行かないと大変なことになるよ」という言葉でしょう。学校に行かなければならないことは、子供にも分かっています。このまま家に居続けていては、将来が大変なことになるのも分かっています。それは分かっているのですが、心の状態がとても、学校に行ける状態になっていないのです。
では、不登校の子供に伝えたいことがある場合は、どうすればいいのでしょうか。その落差をどのように克服すればいいのでしょうか。
その方法の一つが「共感」です。子供がどれくらい、悩んでいるか、落ち込んでいるか、苦しんでいるか、その心の状態をよく理解し、それらの悩みや苦しみを感じ取ることです。共感していたら、自分が伝えたい言葉との「落差」をつかむことができます。つかむことができていたら、「伝えたい言葉が、相手に伝わるだろうか」ということについて、明らかすることができます。そして、「これは伝えた方がいいだろう」「今は伝えない方がいいだろう」という判断ができます。
落差を克服する方法にはもう一つあります。それは、焦らず、「段階をふんで伝えていく」ということです。「早く不登校の状況から脱出してほしい」という気持ちは、これはすべての親御さんに共通しているものでしょう。
その気持ちが焦りになると、落差の大きい言葉を伝えてしまいますので、時間はかかるかもしれないけれども、今の子供の心の状態から見て、落差の大きくない言葉を伝えていくことです。そういう言葉は、心の中に伝えられる可能性があります。
そして、その言葉が子供の心に伝わると、子供は少しずつ元気になっていきます。将来に対して希望を持ち始めます。徐々にそうなっていきます。心の状態が変化していけば、子供は明るくなり、元気になっていきます。そうすると、今度はもっと別の言葉を伝えていけばいいのです。それは前に伝えた言葉より、励ましや勇気づけの内容となるでしょう。そういう内容であっても、今度は落差が小さくなるので、伝えられる可能性が出てきます。
子供への愛情ゆえに、不登校の状況から早く脱出してほしいと願い、たくさんの言葉を伝えたいと、親御さんは願います。それは素晴らしいことなのですが、その言葉が果たして伝わる心の状態なのか、言葉の内容と心の状態との落差はどれぐらいあるか、ということについても、踏まえておくべきことだと思います。
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