UA-139114584-1
top of page

引きこもりから脱出して哲学者になった人、小川仁志。

更新日:2022年10月4日

 小川仁志さんという方をご存知でしょうか。小川さんは哲学者として、テレビ出演しているので、見たことがあるという方もいらっしゃるでしょう。小川さんの経歴を少し書きますと、


1970年生まれ。

1993年 京都大学法学部卒業。伊藤忠商事入社。

2001年 名古屋市役所入庁。

2005年 名古屋市立大学大学院博士前期課程修了。

2007年 徳山工業高等専門学校准教授。

2008年 名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。

2011年 米国プリンストン大学客員研究員。

2015年 山口大学国際総合科学部准教授。

2019年 山口大学国際総合科学部教授。


 小川さんの経歴で興味深いのは、伊藤忠商事を退社後、しばらく引きこもっていた時期があったことです。台湾に赴任した小川さんは、台湾で、ふとしたことがきっかけで民主化運動とかかわることになり、社会を変えたいという人たちと出会うことになりました。それまでは社会に対して関心がなかった小川さんは、「頭をガツンと殴られたような衝撃があった」と述べておられます。


 台湾で一年間働いた後、小川氏は北京で働いていたのですが、民主化運動のあった天安門広場で、台湾での民主化運動と関わった記憶がよみがえり、社会を変えたいと、会社を辞める決意をしました。


 その後、辞表を提出して退職しましたが、それからの数年は、小川さん曰く「黒歴史」になりました。学歴があるほか、何か社会に通用するものがあったわけではなく、台湾の陳水扁氏のように人権派弁護士として働きながら、社会を変えていきたいと考えて、司法試験を受けることを決意しました。


 しかし、当時の司法試験は合格率2%の超難関試験であるのに、自信があった小川さんは独学で受験に挑み、2度の挑戦はすべて失敗に終わりました。初めての挫折で、勉強はしていたものの既に戦意喪失し、だらだらとアルバイトをするフリーターの状態になってしまいました。


 生活費を軽くするために、4畳半一間のボロアパートに引っ越し、割がいいからと夜間の肉体労働をして生計を立てていましたが、そのうちバイトも極力減らし、部屋に引きこもるようになりました。


 ボロボロの服を着て、頭はぼさぼさ、時折来るセールスマンには、気の毒な目で見られる日々。あんなにいい会社に通っていたのに、今はただのフリーターだと噂されるような気がして、人と会うのが怖くなってしまったと、小川さんは当時のことを語っています。


 やがてひどい片頭痛がするようになり、腸からは出血がして、病院にいくとがんかもしれないと診断されました。自殺が頭をよぎるようになりました。幸い、診断結果はがんではなく、小川さんは祖母に相談すると、終戦の経験もあり、そこから這い上がってきた祖母は、「30歳なんでまだまだ若い。なんでもできる」と励ましてくれました。


 そこからもう一度だけ、立ち上がることにしました。死を意識した小川さんは、ようやく懸命に生きる気になり、図書館で手あり次第、自分を救ってくれるような本を読んでいきました。


 そうして出会ったのが哲学だったのです。自分で考え、自分で何とかするという哲学の考え方に出会い、もっと哲学を深く知りたいと考えるようになりました。ただ、当時はそれが将来の自分の仕事になるとは思わなかったようです。


 精神的に立ち直ってきた小川さんは、公務員試験に合格して名古屋市役所職員となり、4年半の引きこもり生活は終わりを迎えました。その後、哲学を学びながら働いていき、やがて哲学を仕事とするようになったのです。


 小川さんは、人生の前半でかなりの学歴を持っていました。また、会社も伊藤忠商事で、職歴も輝かしいものですので、学校にも行かず、学歴も職歴もない、ずっと引きこもった人とは違うのではないか、と思われるでしょう。確かに、小川さんが、引きこもりから立ち直ることができた一つに、そうした学歴・職歴があったことは間違いないでしょう。


 ただ、引きこもりから立ち直ったきっかけとなり、将来の仕事となった哲学については、それまでの人生で学んだわけではありません。引きこもりの中で出会ったものによって立ち直り、将来の自分の武器となることもある、ということを知っていただければと思います。





 

最新記事

すべて表示
不登校カウンセリングブログその959.「不登校になったら、そっとしておいた方がいい」は100%正しいのでしょうか?―登校刺激をした方がいい場合―

「子供が不登校になったら、登校刺激せずにそっとしておいた方がいい」ということを、聞いたことはないでしょうか。子供が不登校になった段階では、子供は深く傷ついていたり、エネルギー切れを起こしていたりするので、「学校に行ってみては?」と登校刺激するのはかえって逆効果になり、登校刺...

 
 
 

コメント


bottom of page